高市新政権の経済政策は?維新との連立政権合意書からわかること

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連立の相手が変わったことで、政策方針にも変化が予想されます。そこでこの記事では、10月20日に発表された連立合意書から経済政策の方向性を探ります。
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高市内閣発足までの経緯
従来、自民党総裁に選出されれば、そのまま首相に就任するのが通例でした。しかし、高市氏の就任までの道のりは、次のように決して平坦ではありませんでした。
9月 7日 石破首相が退陣を表明
10月 4日 自民党総裁選の決選投票により自民党総裁に選出
10月10日 公明党が連立政権から離脱
10月20日 自民党と日本維新の会が連立に合意
10月21日 首相指名選挙で第104代首相に指名され高市内閣発足
石破茂前首相は、衆議院・参議院の選挙での敗北の責任をとる形で辞任を表明。これを受けて、自民党の総裁選が実施されました。
1回目の投票では、5人いずれの候補者も過半数を獲得できなかったため、高市早苗氏と小泉進次郎前経済安全保障担当相(当時農林水産相)の上位2人が決選投票に進みました。決選投票では高市氏が小泉氏を破り、自民党として初の女性総裁が誕生しました。
その後、公明党が連立政権から離脱したことで、自民党単独では首相指名選挙で過半数を確保するのが難しい状況に。しかし、日本維新の会との連立により自民党・維新・無所属の議員を合わせて過半数を確保し、高市氏は首相に就任しました。
なお、維新は閣僚を出さずに政権を支える「閣外協力」という形をとっています。
連立政権合意書に書かれた経済財政関連施策とは

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自民党と日本維新の会の連立政権合意書には、国家観の共有と協力体制の構築のほか、経済財政関連施策や社会保障政策をはじめとした12の項目の政策について記されています。このうち経済財政関連施策の内容は次の通りです。
- ガソリン税の旧暫定税率廃止法案を25年臨時国会中に成立させる。
- 電気ガス料金補助をはじめとする物価対策を早急に取りまとめ、25年臨時国会において補正予算を成立させる。
- インフレ対応型の経済政策に移行するために必要な総合的対策を、早急に取りまとめ、実行に移す。とりわけ、所得税の基礎控除などをインフレの進展に応じて見直す制度設計については、25年内をめどに取りまとめる。給付付き税額控除の導入につき、早急に制度設計を進め、その実現を図る。
- 租税特別措置および高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する。そのための事務を行う主体として政府効率化局(仮称)を設置する。
- 飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う。
- 子どもや住民税非課税世帯の大人には一人4万円、その他の人たちには一人2万円を給付するという政策は行わないものとする。
ここからは、それぞれの項目について見ていきます。
ガソリン税の旧暫定税率の廃止
旧暫定税率とは、本来のガソリン税に“暫定的”に上乗せされている税率です。現在のガソリン税は1Lあたり53.8円ですが、このうち25.1円は暫定税率分です。
暫定税率は、1974年に道路整備などの財源確保を目的に一時的な上乗せとして導入されました。しかし、その後何度も延長が繰り返されて現在まで続いています。暫定といいながら実質的な恒久増税となっていることは長年問題視されており、暫定税率廃止に向けた動きは近年強まっています。
連立政権合意には「25年臨時国会中に成立させる」と明記され、年内の廃止に向けて調整がおこなわれています。
電気ガス料金補助などの物価高対策
高市首相は、所信表明演説でも「この内閣が最優先で取り組むのは、国民の皆様が直面している物価高への対応だ」と述べています。その一環として、「寒さが厳しい冬の間の電気・ガス料金の支援もおこなう」としており、この冬も何らかの支援策が実施される見通しです。
インフレ対応・給付付き税額控除の導入
インフレ対応型の経済政策のうち所得税の基礎控除など税制の見直しは、「2025年中の取りまとめを目指す」としています。
基礎控除の引き上げは、2024年12月に自民・公明・国民民主の3党幹事長会談で「178万円を目指す」との合意がなされましたが、2025年の税制改正では160万円への引き上げにとどまりました。今回、連立政権合意書に盛り込まれたことで、さらに引き上げられる可能性があります。
「給付付き税額控除」とは、所得税から一定額を差し引く「税額控除」と、現金を給付する仕組みを組み合わせた制度です。控除額が納税額を上回った場合、その差額を現金で給付するため、納税額が少ない低所得世帯にも恩恵が及ぶのが特徴です。
比較的少ない財源で所得の低い世帯を支援でき、高市首相が以前から重視してきた政策でもあるため、首相就任で実現に一歩近づきました。
租税特別措置・高額補助金の見直し
「租税特別措置」とは、特定の政策目的を実現するために設けられた税の軽減制度です。特定の団体に毎年交付されている高額補助金と合わせ、既得権益化が指摘されています。
見直しの対象として挙げられているのが、賃上げを行った企業の税負担を軽減する「賃上げ促進税制」です。賃金引き上げを促す効果が期待される一方で、実際には体力のある企業しか活用できないとして、「大企業優遇」との批判もあります。
日本維新の会は「こうした不公平や非効率な支出を見直すべき」と主張しており、旧暫定税率の廃止に伴う税収減を補うための財源としても期待されています。
飲食料品の消費減税の検討
飲食料品の消費税を2年間0%にする案は、日本維新の会が2025年夏の参議院選挙で掲げた公約です。ただし、実施時期などの具体的な方針は合意書に明記されておらず、実現されるかは今後の話し合いに委ねられます。
一律2万円の給付見送り
2025年6月、自民党は参議院選挙の公約として「全国民への一律2万円給付」を掲げました。しかし高市首相は所信表明演説でも、「国民の皆様のご理解が得られなかったことから、実施しません」と述べており、給付は見送られることになりました。
高市新政権の経済政策に注目

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自民党と日本維新の会の連立政権は、無所属議員も合わせると衆参両院で過半数を確保しており、今後は連立合意書の内容をもとに政策が進められるとみられます。
連立合意書には旧暫定税率の年内廃止など期限を明確に定めた施策もある一方で、飲食料品の消費税のように具体的な時期や方針が示されていない項目もあります。また、旧暫定税率廃止に伴う財源の確保や物価高対策の具体的な手法など検討すべき課題も多く、新政権がどう対応していくのか注目されます。