どうなるトランプ関税④主な輸入相手国の相互関税率と現れ始めた影響

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この記事では、日米関税の合意文書の内容のほか、国ごとの関税率や経済への影響を分かりやすく解説します。
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日米関税の大統領令や共同声明の内容とは?

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アメリカが日本からの輸入品にかける関税について、7月23日に合意が発表されました。これにより8月7日から相互関税は25%から15%に引き下げられましたが、自動車関税の引き下げについては具体的な時期は示されていませんでした。
また、すでに関税がかかっている品目に追加関税が上乗せされているなど、合意内容の実効について日米で認識のずれが生じていました。
そのような中、合意から1ヵ月以上経った9月5日に大統領令と日米共同声明が出されました。
大統領令には何が書かれた?
トランプ大統領が9月5日に出した「日米協定の実施」という大統領令には、主に次のような内容が明記されました。
- ほぼ全ての日本からの輸入品に15%の関税を課す
- 自動車及び自動車部品、航空宇宙製品、ジェネリック医薬品、並びにアメリカで天然に入手又は生産されない天然資源は個別の特例措置を適用する
- 一般関税率が15%以上の品目には相互関税は課さず、すでに支払った分は返金される
- 日本からの自動車・自動車部品の関税を7日以内に15%に下げる
この大統領令により、具体的な時期が示されていなかった自動車関税の引き下げは9月16日から適用されました。また、相互関税が上乗せされていた関税率15%以上の品目について、払い過ぎた関税は8月7日にさかのぼって返金されることになりました。
参考:Implementing The United States–Japan Agreement – The White House
日米共同声明には何が書かれた?
大統領令が出されたのと同じ9月5日、日米両政府は7月23日の合意内容について共同声明を発表しました。共同声明の主な内容は次の通りです。
- 日本は、アメリカ産の農産品(バイオエタノール、大豆、トウモロコシ、肥料など)、その他のアメリカ製品を年間80億ドル規模で追加購入する
- 日本は、アメリカのボーイング製航空機を100機購入する
- 日本は、ミニマムアクセス制度の枠内でアメリカ産のコメの調達を75%増加させる
- 日本は、アラスカの液化天然ガス(LNG)調達の検討を進めつつ、アメリカのエネルギーを年間計70億ドル規模で安定的かつ長期的に追加購入する
- 日本は、防衛力整備計画に基づくアメリカ製の防衛装備品、半導体の年間調達額を数十億ドル規模で増加させる
- 日本は、安全が認証されたアメリカ製乗用車を追加試験なしで日本でも販売できるようにするとともに、アメリカ製乗用車に対してクリーンエネルギー自動車導入促進補助金を提供する
- アメリカは、日本製の医薬品や半導体(半導体製造装置を含む)にかける関税について、他国の製品より高い関税率を適用しない
- アメリカは、日本製の航空機・航空機部品に関税をかけない
共同声明は合意内容をあらためて確認するもので、これまでに日本政府が公表していた内容に沿った形となりました。また、日本が半導体や医薬品の分野において「最恵国待遇」を受けられることが盛り込まれました。
参考:ジェトロ| ビジネス短信
アメリカの主な貿易相手国・地域と相互関税率
| 国・地域 | 当初案 | 10/30現在 | 備考 |
|---|---|---|---|
| メキシコ | 25% | 25% | 30%の追加関税は8/1から90日間延期 |
| 中国 | 34% | 34% | 47%にすることで合意 |
| カナダ | 25% | 35% | 10%上乗せを表明 |
| EU | 20% | 15% | |
| 日本 | 24% | 15% | |
| ベトナム | 46% | 20% | |
| 韓国 | 25% | 15% | |
| 台湾 | 32% | 20% | |
| インド | 26% | 50% | 交渉中 |
2025年10月30日現在、多くの国に対する関税率は確定しましたが、一部の国との間では交渉が続いています。
インドには、相互関税25%に加えてロシア産原油の輸入に対する制裁として25%の追加関税が上乗せされ、合計で50%の高い関税が課されています。しかし、10月に対印関税を大幅に引き下げる可能性が報じられ、現在交渉が続いています。
一方、カナダに対しては、カナダ・オンタリオ州で放送された関税政策を批判するテレビ広告にトランプ大統領が強く反発し、10月26日にSNSで「カナダ産品に対する関税をさらに10%上乗せする」と投稿しました。
なお、中国とは一時お互いに100%を超える追加関税をかけ合うなど貿易摩擦が続いていましたが、10月30日の米中首脳会談で47%に決着しました。
このように、関税率の決定は国ごとに事情が異なるため、交渉が長引いたり合意後に追加関税を提示されるケースも少なくありません。
新たな品目別関税が発表
トランプ関税では、国ごとの「相互関税」に加えて、品目ごとに個別の関税率を設ける「品目別関税」も導入されています。これはアメリカ国内の産業を守ることを目的に、特定の製品だけに高い関税を設定する仕組みです。
すでに2025年6月からは、鉄鋼やアルミ製品に50%の関税がかけられています。10月1日からは、以下の品目にも追加関税が適用されます。
| 品目 | 追加関税率 | 発動時期 |
|---|---|---|
| 医薬品 | 100% | 10月1日 |
| キッチン・バスルーム用キャビネット | 50% | 10月1日 |
| 布張り家具 | 25% | 10月14日 |
| 中・大型トラックとその部品 | 25% | 11月1日 |
この中で日本への影響が大きいのは、医薬品と中・大型トラックです。このうち医薬品は、「すべての国・地域で最低水準となる“最恵国待遇”を適用すると約束する」という日米の合意に基づいて15%が適用されます。
一方、中・大型トラックとその部品については、「日本製を例外にしない方針」が表明されています。既存の税率25%に追加関税として25%が上乗せされると、合計50%の関税が課されることになります。
トランプ関税の経済への影響
関税の発表直後は世界的に株価が大きく下落しましたが、その後1か月ほどでほぼ回復しました。10月には日経平均株価が5万円を突破したほか、世界的にも順調に推移しています。
しかし、アメリカ国内では徐々に影響が出始めています。関税が上がる前に輸入した在庫が底をつき企業が関税分の負担を抱えきれなくなったことで、物価が上がり始めました。8月の消費者物価指数(CPI)は前年より2.9%上昇し7か月ぶりの高水準となり、9月は3.0%とさらに物価の上昇が進んでいます。
雇用の動きにも変化が見られます。8月の雇用統計では雇用者増加数が予想を下回り、9月、10月も横ばいで推移。雇用情勢の悪化が指摘されています。
このように、トランプ関税の影響はアメリカ国内に徐々に広がりつつあります。このままアメリカの景気が弱まると、世界全体の経済にも影響が広がるおそれがあります。
トランプ関税の本格的な影響はこれから

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トランプ関税のうち、国ごとの相互関税率はおおむね決まりましたが、インドのように、交渉が続いている国もあります。一方でカナダのように、合意が成立したあとに政治的な理由から関税の引き上げを示す動きも見られます。
また、品目別の関税率はこの先新たに追加される可能性もあります。このように、トランプ関税は今後も外交や経済交渉、報復措置などに利用されると考えられます。
さらに、アメリカでは物価上昇や雇用情勢の悪化などの影響が出始めています。今後、アメリカで景気が後退した場合、世界経済にどのように広がっていくのかにも注目が必要です。
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