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2025/05/23

どうなるトランプ関税① 関税の仕組みと日本経済への影響

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「アメリカファースト」を掲げるトランプ大統領の相互関税政策は、世界経済に大きな衝撃を与えました。日本も例外ではなく、自動車をはじめとした輸出産業が打撃を受けつつあります。しかし、「関税」という言葉はよく耳にするものの、どのような仕組みでどう影響があるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、関税の仕組みやトランプ関税のこれまでの動向、日本経済に与える影響についてわかりやすく解説します。
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関税とは?基本的な仕組みと関税をかける理由

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関税とは、国が輸入品に対して課す税金のことです。例えば日本で売られているアメリカ産牛肉には、21.6%(2025年5月13日現在)の関税がかかっています。関税が課されるのは輸入する側の企業や人で、税関の審査・検査後に輸入国に対して支払います。

関税をかける理由は主に3つです。

1つ目は、国内産業の保護です。海外から安い製品が大量に入ってくると自国の産業が打撃を受けるため、関税で価格を引き上げて国内製品の競争力を守る狙いがあります。例えば日本はコメ生産者保護のため、一定枠を超える輸入米には1kgあたり341円の高い関税を課しています。

2つ目は、国の財源確保です。例えば関税率5%の製品100万円分を輸入すると、5万円が国の税収となります。

3つ目は、外交交渉のカードです。貿易交渉で有利な条件を引き出すため、関税をかけたり下げたりすることで相手国に圧力をかけることがあります。

関税がかかると経済はどうなる?

関税がかかると、輸入品の価格は上がります。例えば、アメリカが日本車に25%の関税をかけると、4万ドルの車が単純計算で5万ドルになります。結果として、アメリカの消費者は高い日本車を敬遠し、国内メーカーに目が向きやすくなるというわけです。

しかし、関税による外国製品の値上がりで物価が上昇すると、景気が減速する可能性が高まります。また、貿易相手国が報復関税を課すことで貿易摩擦が激化する恐れもあります。

このように、関税は国内産業を守る効果がある一方で、長期的には経済成長を抑制し、消費者や企業にとって大きなデメリットを生じることもある「諸刃の剣」といえます。

トランプ関税のこれまでの動向

トランプ大統領はみずからを「タリフマン(関税男)」と称し、「関税でアメリカを再び豊かにする」との主張の下に関税を強化しています。2期目の大統領就任以降に発表・施行された主な関税政策について、時系列で見ていきましょう。

2月1日(土)

2月4日からカナダ・メキシコ産品に対して25%の関税、中国産品に対して10%の追加関税を課すと発表(のちに、カナダ・メキシコに対する関税は適用開始を3月4日まで延期)

2月10日(月)

  • 鉄鋼・アルミ製品に対し25%の追加関税を発表

3月3日(月)

  • 中国産品に対する追加関税を10%から20%に引き上げると発表

3月4日(火)

  • カナダ・メキシコに対する25%追加関税発動 

3月12日(水)

  • 鉄鋼・アルミ製品への25%の関税を全面適用開始
  • アルミ缶や缶ビールも対象項目に追加

3月26日(水)

  • 自動車および特定の自動車部品の輸入に対して25%の関税を課すことを正式に発表

4月2日(水)

この日を「解放の日」と称し、相互関税の内容を発表

  • すべての国に対し一律10%の追加関税を課す
  • 貿易赤字額が大きい57の国・地域には個別に上乗せした関税を課す(日本は24%)

4月5日(土)

  • 全ての国からの輸入品に対し10%の関税を発動

4月9日(水)

  • 国別の相互関税を発動(中国以外の国への相互関税は90日間停止)

自動車・自動車部品に対して25%の追加関税を発動したことで、日本からアメリカに輸出する乗用車の関税は2.5%から27.5%に引き上げられました。また、ピックアップトラックなどにはもともと25%の関税がかかっていたため、合計で50%に達しています。

自動車以外の日本製品についても24%の追加関税が発表されましたが、日米間の交渉を受けて90日間の猶予措置となり、現在は一律10%のベースライン関税が適用されています。

現在、日本を含むアメリカの貿易相手国は個別に交渉をおこなっており、関税の一部引き下げが実現しつつあります。

日本の相互関税はなぜ24%

「相互関税」とは、貿易相手国が自国製品に課している関税や非関税障壁の水準に応じて、同等の関税を課す仕組みです。トランプ大統領は、アメリカが輸入するすべての製品に一律10%の基本関税を課した上で、日本に対しては追加で14%、合計24%の関税を課すと発表しました。

相互関税の税率は、貿易相手国ごとに非関税障壁などを加味した関税率を計算し、それを半分にしたものと発表されています。関税率の算出方法は、相手国に対する貿易赤字額を相手国からの輸入額で割ったものといわれています。

日本経済への具体的な影響

相互関税の発令により、経済の先行き不安から世界中で株価が急落しました。10%のベースライン関税が発動されて初めての取引となった4月7日(月)の日経平均株価は、先週末より2,644円値下がりし、過去3番目の下落幅を記録しました。

株価だけでなく実際の経済にも影響を及ぼし始めており、特にアメリカへの依存度が高い自動車業界への打撃は深刻です。例えばトヨタ自動車は、トランプ関税の影響による2025年4~5月の減益を1,800億円と見込んでいます。ホンダや日産は関税を回避するために、アメリカ向けに製造する一部の車両について、日本からアメリカに移すことを決定しました。

また、日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表したアンケート結果によると、追加関税が企業のビジネスに与える具体的な影響について63.1%もの企業が「日本から米国向け輸出の減少」と回答しており、アメリカへの輸出停滞による日本の景気悪化も心配されています。

トランプ関税はこれからの交渉に注目

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日米間では、2025年5月後半以降に3回目となる関税交渉が予定されています。すでに中国やイギリスはアメリカと合意に達しており、関税の引き下げが実現しています。

日本は今後の協議次第で関税が引き下げられる可能性もありますが、現時点での先行きは不透明です。アメリカの関税は日本経済に与える影響が大きいため、今後の交渉の行方が注目されています。